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2014.04.12 (Sat)

生放送お笑い番組の完全終焉と今になって思ういいとも増刊号の役割

そろそろ、いいとも終了に関する文章は出尽くした感があるが、もうひとつ、先日知人と食事をしていた際に話題になったことを書いておきたい。

それは「笑っていいとも」が終わったことで、テレビ番組における生放送のレギュラーお笑い番組の息の根が完全に止まったということである。
後継番組の「バイキング」にはお笑い芸人が多数出ているものの、裏の「ヒルナンデス」同様に「情報番組」の冠をかぶっている。お笑い生放送番組は本当に終わったのである。

ただ、実を言うと、日本におけるレギュラー生放送お笑い番組というのは、今から30年前、1985年の時点でとっくに終わっている。
8時だョ!全員集合が終わる際、TBSは公式発表の中で「生放送を公開形式でやっていくことには限界があった。ナンセンスギャグもやり尽くした」と発表しているのだ。

同じ時間の裏番組であった録画形式のひょうきん族に対して、生放送を貫き通した全員集合の敗北宣言がここにある。
もう、この時点で、お笑い番組を生でやることは否定されていたのである。

その後も、お笑い芸人が生放送を売りにした番組に挑戦する機会はあった。
とくに複数の冠番組を持つ芸人を使う際、他の番組と差別化するために生番組とする傾向が90年代にはみられた。

例えば、とんねるずは1991年に「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」で生放送お笑い番組を開始した。「生ダら」の愛称で知られたこの番組は2001年まで10年にわたって続いたが、本当に生放送だったのは最初の数回だけで、その後は「生で」の看板に偽りありの録画放送となっていた。

ダウンタウンも、最盛期であった1992年に「生生生生ダウンタウン」という番組をスタートさせたが、これも半年で録画放送となり1年で番組は終了した。

なぜ、お笑い番組は生放送になじまなくなったのか。その一因として番組編集が挙げられる。
まず、90年代からお笑い番組は編集によってテロップを入れ笑いを増幅させることが常識になった(その元祖と言われているのが、皮肉にも前述の「生ダラ」である)。生放送ではそれが出来ないことで、テロップ慣れした視聴者に物足りなさを感じさせるようになってしまった。

また、編集は面白くない箇所を削り、面白いところだけを抽出する作業でもある。録画・編集を経て笑い密度が濃くなった番組に対して、生放送というのは笑い密度という点でどうしても負ける。
スベリ知らずのように見える芸人であっても、生放送では百発百中とはいかないし、変な空気になることも多々ある。
カルピスを原液でしか飲んだことのない人に、水で薄めたカルピスをいくら「これが本来なんだよ」と言って勧めたところで、「薄いね」のひとことで片付けられてしまう。

こうしてテレビ界は、生放送のお笑い番組をあきらめていった。
しからばなぜ、笑っていいとも!は2014年まで生放送お笑い番組の形式で生きながらえたのだろうか。

もちろん、いいとも!は「お笑い番組」ではなかったから、という答えもあるだろう。お笑い番組の定義など曖昧なのだから、そのように分類してしまう手もある。しかし、やはりいいとも!は「笑って」いいとも!である以上、やはりお笑い番組である。よしんばお笑い番組でなくとも、情報番組ではなかったのは間違いない。いいとも!にほぼ有益な情報はなく、逆に言えば有益な情報がないことがいいとも!が長く続いた理由なのだから。

話がそれた。なぜ、いいとも!は生放送レギュラーお笑い番組として続いたのか。

ひとつは時間帯である。
そもそも昼のこの時間帯の視聴者は「ながら観」が基本で、そもそも番組に密度を求めていない。飯を食いながら気楽に観られる程度の笑いがあればそれでよかった。
たとえ、微妙な空気の時間があったとしても、それは、カップ焼きそばや、コンビニおにぎりを咀嚼する中での暇つぶしとしては目くじらをたてるようなものではなかったのだ。

そしてもうひとつ重要なのは増刊号の存在である。
巷のサラリーマンは殆どいいともをリアルタイムでは観ていなかった。
日曜日の朝、だらだらと遅く起きて、テレビをつけ、笑っていいとも増刊号をみてはじめて、今のレギュラーが誰かを把握していたのだ。
当然ながら、増刊号は生ではない。テロップこそ殆どでないが、生放送の面白かった部分を録画編集して凝縮したものが増刊号である。
そのため、実際にリアルタイムでみるいいともの笑いが全体的に薄くなっていたとしても、殆どの人に気づかれなかったのである。

現状を踏まえると、いいとも終了以後、生放送のお笑いレギュラー番組が始まることはもう無いかもしれない。
しかし、生ゆえの緊張感、生ゆえのハプニング、それは情報番組やニュース番組だけのものではないはずだ。

いつか、志のあるお笑い芸人が、再び生放送レギュラーお笑い番組に挑戦することを期待している。
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