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2014.02.16 (Sun)

テレビバラエティの止まらない年功序列化が若者のテレビ離れを生んでいるという仮説

高度成長時代における日本企業の大きな特徴「年功序列」が揺らいで久しい。
欧米型実力主義の導入、バブル期の大量採用とその後の氷河期世代のギャップなどから、時代は年功序列を廃していく方向に流れている。現状、正しくそれを守っているのは銀行業界くらいと言ってもいい。

しかし、ここで話したいのは年功序列か実力主義かといったビジネスの話ではない。日本のテレビバラエティの話である。

1970年代〜90年代にかけて、日本には「若者しか見ないテレビ番組」というものが存在した。
「若者しか見ないテレビ番組」には、若者に人気の新顔タレントが主役として起用され、年寄りにはわからない面白さで徐々に時代を席巻。それまで時代を謳歌した人気者を旧世代に追いやった。そういった新陳代謝がかつてはあった。

ドリフが、ひょうきん族に駆逐され、とんねるずはザ・ベストテンを終了に追い込み、ダウンタウンやウンナンが若くして冠番組を持つ。そういう下克上のうねりが、近時、まったく起こっていないのがひじょうに気になるのだ。

以前、博多大吉が「若者のテレビ離れの原因は、今のテレビバラエティの主役が35歳オーバーで、35歳オーバー世代の目線で作られた番組ばかりだからだ」という主旨のことをラジオで言っていた。
それはそれで正しいと思うのだが、問題はそういった状況を作り出してしまった根本原因である。なぜ主役が35歳オーバーのままとどまっているのか。

私は、テレビバラエティの構造が年功序列化していることが、その主因だと思っている。

バラエティの年功序列化とはどういう意味か。
一部のネタ番組を除いて、今、現在、若手タレント(とくに芸人)が売り出していこうとすると、まずは、実績のあるタレントが仕切る番組のゲスト出演から始まる。
そこでの主役はあくまで「実績あるタレント」であり、あくまで「その色の中」で、爪痕を残したり、うまくいじられたりすることが求められる。何かしらの爪痕を残した次のステップは、「違う実績あるタレントの番組に出る」ことである。しかし、いくら人気が出ても、冠番組を持つには数々のステップを踏まなくてはならない。
ゲストとして実績を踏み、レギュラー番組をいくつか持ち、数々の先輩タレントと絡み、ラジオでも実績をあげ、地方でも頑張って、やっとキー局の冠番組を持てる。しかもその冠番組は自分の色を出せるものとは限らない。脱力系散歩番組の二番煎じかもしれないし、クイズバラエティかもしれない。

これでは、年功序列型の会社である。

まずはAという部署に配属され、部長の配下でやり方を学ぶ。成績が上がると「ではBという部署で今度はやってみたら」と言われる。自分の部下を持つには、永遠に近い長い道のりがあり、いざ部長になれたとしても、ポストの関係で自分の畑違いの部署にまわされ、よくわからないままハンコだけは押している。こんな状況にひじょうに似ている。

このような会社からは、時代を変えるようなアイディアや商品は生まれてこないように、こんな土壌から新しい感性は湧き出ては来ない。
唯一、(内容が新しいかはともかく)若手タレントに冠番組を持たせることに自覚的だったフジテレビも、近年「はねるのとびら」や「ピカルの定理」を終わらせてしまい、その後、このような枠をつくっていない。

なぜ昔のように無謀とも言えるような若手がゴールデンタイムに冠番組を持ち、先輩タレントとは無関係な世界で成り上がっていくことが出来なくなってしまったのか。

テレビ業界自体がスポンサー商売であり、不景気で保守的になっているという時代背景はもちろんあるが、ひとつ契機になったのはオリエンタルラジオの失敗と復活ではなかったかと思う。

「武勇伝」ネタで、若者に大人気だった(とされている)オリエンタルラジオは、わずかな芸歴にも関わらず、いっきに冠番組を複数持った。しかし、その全てがさんざんの評判で、すぐに打ち切りとなってしまった。
その後、低迷期を経て、各々のキャラを活かし再度下積みゲスト枠からやり直した結果、現在では復活を果たし芸能界にしっかりと地に足をつけている。ただ、それはあくまで「主役ではなく脇役として」の活躍である。

これを見たテレビ関係者は「やはり、先輩の庇護の下で経験を積ませてから独り立ちする方が、リスクがない」と感じ、若者に人気があるからと冒険するのをやめたのではないかと思うのだ。

先輩の番組に出た若手芸人はバラエティでは常にいじられる側である。出て来た当初はとんがった芸や考え方をもっていても、繰り返し他人の土俵で転がされていくと、徐々にそれは消えていく。丸くなってから独り立ちすれば、大きい失敗はしないが、大きい成功もまたしない。

たとえば、ちょっとジャンルは異なるが、今女子高生にウケていると言われる「HR」モデルけみおのVine6秒動画
41歳の私には面白さはわからないが、これはこれで若者にはわかる面白さなわけである。

しかし、これを(情報番組ではなく)テレビバラエティで取り上げるとなると、恐らく「行列ができる法律相談所」とかに呼ばれて、東野幸治やフットボールアワー後藤から色々と上から目線で突っ込まれることになってしまう。
番組は盛り上がるだろうが、それは40代が10代の奇妙な風俗を見て笑う的な盛り上がりであって、10代がこれを見て「ウケる」と言っているのとは全く違う。

10代がけみおを見てうけているのと同じ感覚で10代が笑えるテレビバラエティ、それを10代に人気のタレントが先輩タレントとは隔離された世界で仕切る。そういうのが出てこないことには、テレビバラエティは永遠に年寄りのものになる。

年功序列の会社は定年があるが、芸能界には定年がないのだから。
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